キャリア教育が必要とされる背景とその取り組みについて
キャリア教育とは?
キャリア教育とは、「児童一人ひとりの勤労観、職業観を育てる教育」です。社会で働く力を身につけ、自分自身で進路を切り開くために、キャリア教育は重要です。
近年では、文部科学省がキャリア教育の推進に力を入れています。文部科学省によると、学校の教育活動を通じて、児童の発達段階に応じた組織的なキャリア教育の推進が必要とされています。
キャリア教育が必要とされる背景
近年、少子高齢化や働き方の多様化など、日本の社会構造が変化してきました。その影響で若年層の社会的自立が遅れ、働くことへの関心が薄れているといわれています。
社会的自立の遅れによって引き起こされるネガティブな問題は、次のような内容です。
- 新卒社員の早期離職
- 定職につかずに生活するフリーター、ニート
- 人間関係の希薄化
- 自己肯定感の低下
これらの解決策として注目されたのが、キャリア教育です。
学習指導要領の改訂によって、キャリア教育が幼稚園・小学校・中学校・高校のカリキュラムに組み込まれ、2018年頃から実施されています。
キャリア教育と職業教育
キャリア教育と似た言葉に、職業教育があります。職業教育とは「特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育」とされています。
専門性を身につけるための職業教育に対して、キャリア教育はより幅広く、自分らしく生きていくための教育といえるでしょう。キャリア教育と職業教育は、働く力を身につけるという点で共通しています。
キャリア教育で身につけるべき能力
キャリア教育によって身につけられる能力は、大きく4つに分類されます。
- 人間関係形成・社会形成能力
- 自己理解・自己管理能力
- 課題対応能力
- キャリアプランニング能力
以上の4つは基礎的・汎用的能力として満遍なく身につける必要があります。
人間関係形成・社会形成能力
人間関係形成・社会形成能力は、他社の考えや立場を理解して相手の意見を汲み取る能力です。
自分と異なる立場に置かれた相手と協力して社会活動をおこなうスキルは、職場で円滑な人間関係を築くために重要です。
自己理解・自己管理能力
自分が「できること」「異議を感じること」「したいこと」で社会との相互関係を保ち、今後の成長のために進んで学ぼうとする能力です。
自分の思考や感情をコントロールして、主体的に行動する力といえるでしょう。
課題対応能力
課題対応能力とは、その名の通り仕事上の課題を分析し、問題解決に導く能力です。
予期せぬトラブルに対処する場面で、計画を立てるために必要な能力です。
キャリアプランニング能力
「働くこと」の意義を理解して、主体的にキャリアを形成していく能力です。
キャリアプランニング能力の向上は、自分自身の立場を理解し、働くモチベーションを高めることに繋がります。
キャリア教育への取り組み
政府が推進するキャリア教育ですが、企業や教育現場ではどのような取り組みがおこなわれているのでしょうか。
いくつか具体例を見てみましょう。
株式会社ファーストリテイリング
株式会社ファーストリテイリングは、ユニクロやGUといった衣料ブランドを手がける大企業です。株式会社ファーストリテイリングは、“届けよう、服のチカラ”プロジェクトと題して小・中・高校生対象の参加型学習プログラムを展開しています。
プログラムの内容は「出張授業」と「子ども服の回収活動」です。出張授業をおこなったのち、子どもたちが主体となって、子ども服の回収活動をおこないます 。回収した服は、難民などの世界中で服を必要とする子どもたちに届きます。株式会社ファーストリテイリングの取り組みは、経済産業省が選ぶ第11回キャリア教育アワードで大賞に選ばれました。
岡山県の小学校
岡山県の小学校では、地域の特産品であるブルーベリーについて学習し、栽培活動の経験やブルーベリー農家を見学するプログラムがおこなわれています。ブルーベリーの栽培活動や農家との交流を通じて、自分の考えを深めて勤労観、職業観を育てる狙いがあります。
また、ほかの生徒と協力することで、人間関係を形成する能力が培われるでしょう。
地域で働く人たちと関わる活動は、自分に何ができるかを考えるきっかけとなって、働くことへの意欲向上に繋がります。
麴町学園女子中学校高校
麴町学園女子中学校高校は、100年以上の歴史を持つ伝統校です。
麴町学園女子中学校高校では、中学1年から高校2年までの5年間、必ず毎週1回「みらい科」というキャリア教育がおこなわれています。みらい科の内容は、日本文化理解、国際理解、職業体験など多岐にわたります。高1から高2にかけて取り組む「みらい論文」は、5年間の集大成です。これまでの活動から生徒一人ひとりが興味を持てるテーマを見つけ出し、1万字のみらい論文を完成させます。